二重性、あるいは事実は小説より奇なり(解説)

解説 私がマゾヒストになったのは、高校三年生の頃のある事件が きっかけです.tabaはその事件をもとに作ったものです. 当時は受験で忙しく、ストレスが溜まっていて、 そのせいか毎日のようにオナニーをしてました.女性に強い興 味を持ち始めたのもこの頃で、往復の電車で女子高生の姿を 見ては興奮していたものでした.まあもちろんそれ以前から 興味はあったのですが、これほどまでに強く興奮するように なったのはやっぱりこの頃からでしょうか.女子高生を見たとき どこに一番興味を持つかといえば、それは脚でした.胸にも興奮 したわけですが、脚というのは、当時流行のミニスカートの中 へと続いて行くわけで、角度次第では中が覗けるんじゃないか なんて考えるとついつい興奮してしまったわけです.まあ興奮 するのは今も同じですが(笑)。マゾヒストになる前は、 単に脚がミニスカートへ続くとか、無自覚ながら脚自身が 好きだとか、そんな普通の人も考えそうな理由でした。 苛められること……今自分が食い入る様に見ているその脚で 蹴られたいとか踏まれたいとか、そんなことは思いもしません でした.……あの事件が起こるまでは. まあ、オナニーの時は、女性に攻められるセックスを(セックスを! 今では単なる余分としか思うことのできないセックスを!) 想像してはいたんですが。しかしこれもメインの理由は、 別に苛められたいとかそんなものではありませんでした。 当時は、漫画なんかから入ってくる少ない情報のせいで、 女性はセックスを嫌がる……私が性的に興奮しているのを見て 露骨に軽蔑したり、冷やかしたり、抵抗したり、警察を呼ん だり、そんな事をするものだと勝手に思っていたので、文学 青年きどりだった私は、オナニーという自分一人の妄想に おいてさえ、「現実」離れした妄想をするのが嫌で、 だから普通の人がよくする妄想、自分が女性を裸にして 胸を揉んだりセックスをしたりすると、女性が官能し、 悦び息をはぁはぁいわせて、もっともっととせがむ…… そんなポルノ小説にありがちな状況は極端なまでの 御都合主義だと思ってました。 もともと人付き合いが苦手だった癖に、自己主張が強い ところがあって、そのせいかどこか人間不信、人間嫌いな ところがありました。そんなところに本という逃げ込む場所を 得て、本ばかり読んでいたんですが、その読んでる本たるや、 だいたいは人間不信を助長させるようなやつばかりでした。 そんなこんなで、ひねくれた性格になってしまって、 多くの人達……つまり自分を嫌ってる人達というのは、多分 自分が苦しんでるところを見れば、かえって悦ぶだろうと そんな風に思うようになりました. そのくせ甘えたところもあって、人懐っこいというか、 自分によくしてくれる人にはなついていました. 人一倍不安の強い方で、ちょっとした事でも、不安になって、 自己顕示欲が強かったこと(明らかに本の影響。自分を主人公と 同一視してたから、本の登場人物並にめだちたがりだった)も あいまって、だからよく人前で自分の暗い側面を出してました。 そうすると、まあ普通の人は引きますよね?特に普段から自分の 事をあんまり好いてない人だと、当然冷たい態度をとるわけで。 そんな事にも気付かなかったさびしがりやの自分は余計に 他人を信じなくなったわけです. だからこそ、性欲という自分本位のものに女性が悦んでくれる というのが信じられなくて、逆に興奮した女性が 自分にセックスを強要する、そんな状況こそが「現実的」だと 思いこんでいたわけです。 そんなかんじだから、女性が本性を露骨に出して、自分を性欲 処理の材料にするという設定を好んで、妙に悦に入っていました。 まだ今みたいに苛められるというそれ自身を悦んでたわけじゃなくて、 荒んでいたせいか対立の中のセックスというのが嬉しかっただけ なんですよね. だから、今では信じられないんですが、一時期は嫌がる女性を 相手に無理やりセックスをするっていう妄想に凝った事もありました. ただ、オナニーに対する罪悪感が強かったのと、強い反面の 妙な弱さがあったから、ある時期を境にあまりしなくなったん ですけどね.結局のところ、自分の強さというのは、わがままで 恥ずかしがりやな性格が、自己の弱さを見せない為に生み出した 虚勢だったのかもしれません. オナニーに対する罪悪感は人一倍強い方でした.理性に対する 絶対の信頼があったから、本能から沸き起こる性欲というものに どこか嫌悪感を持っていたんですね. 自我の強さと、そしてそれとは対立する人懐っこい甘えた性格。 強さと弱さ、理性と本能。こうした矛盾が、自分の苦手な人 付き合いという場面に晒されたため、不安になって、さびしく なって、だから逆に周囲を嫌って……そんなふうに、周りが 見えなくなってたんですね. そんな風に普通ではいられなくて、どこかゆがんでいたわけですが、 このゆがみが、本来の自分とあまりに違いすぎる表面的人格が、 マゾヒスティックな感情を生み出す温床になったわけです。 高校三年になってからというもの受験へのストレスや不安が溜まって いたんですが、そこに「あの事件」は起きました. 原因になったのは一人の女性でした. 部活にいた2つ年下の女の「彼女」を好きになったのですが、 まあ好きっていっても半分は無自覚な、そんなもので、 しかも等の相手は別の男と付き合ってました.(相手の男は同じ部活で、 友人でした.)当時、その部活は私以外にも三年生が多くいたせいか、 どこか病的な雰囲気でした.特に、性的な事がひどくて、例えば部活の 連絡用ノートにボールペンの絵が書いてあったんですが、ある日 その絵を見てみると、いつのまにか、上に変な水玉のようなものが 書いてあって、横に「びゅっ」というふきだしがついてました. ようするに、誰かがそのボールペンの絵をペニスに見たてて、 射精した時の白濁液を書き加えたわけです.ポルノ漫画がおかれてた こともあったし、卑猥な冗談は日常茶飯事でした. 部活には半分くらい女の子がいて、彼女達は、その手の落書きや なんかをわざとらしく無視していましたが、そんななか、問題の 「彼女」だけは等の本人も一緒になってました。例のポルノ漫画は 彼女も読んだし.彼女に限らず、男も女も、どこか舞い上がって ました. ある冬の日、私が部活にいくと、例によってどことなく猥褻な雰囲気が ありました.みんなでコタツに入ってはなしていたんですが、 何かの話で彼女が私に突っ込みを入れて、それに対して 私がふざけ半分に相手を叩こうとしました.しかし向かい側にいた 彼女にはそれがあたらず、だから叩く為に彼女に近寄ろうとしたわけです. どこかむらむらしていた私は、ふざけ半分である事をいい事に、 彼女に近づく時、「コタツの中を通って行く」と主張しました. 「お前なんかの為に、コタツを出て寒い思いをするのが嫌だ」とか なんとか主張して.彼女を含めて、女の子は二人いたんですが、 スカートだった子もいて、だからコタツに潜ったら見えちゃうわけです. だからみんな反対するんですが、でも普段から猥褻な雰囲気が漂ってた せいか、反対しながらも、どこか容認……彼女達も心の中は、おそらく 性的な雰囲気に飲まれて、緊張するような窮屈な感じを受けていたのか、 ある程度容認するような雰囲気もありました. まあ、結局何のかんのいいながら、コタツを通るまねをしたりしてた くせに、結局はやらなかったんですけど. しかし、そのうち私はあることに気付いてしまったんです. 何気なく足を伸ばせば向かい側の彼女の脚と脚の間に当たるだろうと……。 もちろん、万が一相手に追求されても、わざとじゃないと言い逃れできる わけです。 何日もの間受験のストレスに晒され、同時に長い事、部活のこの特殊な 雰囲気に晒されてきた私は、ついに耐えられなくなって、そろりそろりと 足を伸ばし、ついにそれを実行してしまったのです. 軽く触れて、そしてすぐさま相手に反応がありました.それですぐ、 「あ、ごめん」とあやまったんですが、それから少しして信じられない事が 起きました. 彼女が、こんどは彼女がその脚を伸ばして私のペニスを踏みつけたんです. ……かかとは袋のところにあたってて、そして、足全体でペニスを覆う ようなそんな風に踏みつけられた.そしてそのまま何度も何度も、 脚に力を入れ、ぐいぐいと踏み込んできた。それ以前から嫌らしい露に ぬれていたペニスはその踏みつける力に右に左にゆれて、 官能に悲鳴を上げた。気持ちよくて、でも、同時にやめて欲しくて、 それでいて先を期待していて……。私は踏み込まれる中、なんども なんども「やめて、やめてくれよT**」、そう口に出して行って しまった。周りには何人も人がいたというのに……それでも容赦無く 踏みつけ、そして踏み込む彼女.彼女の胸中は?全く慮る事ができ なかった。だが、自分の胸中を知ってもらいたくてだからかえって また「やめて、やめて」と叫ぶ.そんな、今にしてみれば地獄のような 苦しみが、快楽が、無限と思えるほど続いた. ……もちろん本当はせいぜい五〜十分くらいだったんでしょうが、 当時の自分には、信じられないほど長く感じられたものでした. 自分はその前の行為に罪悪感があったから、反撃する事もできなくて、 かといって気持ちよさに逃げる事も出来なくて…… しかしそれも突然の終わりを迎えました.急に彼女がやめてしまったの です。私はといえば、何が起こったのか分からず、ぼぉっとして、 わざと腰を彼女の方に近づけたりしたんですが、駄目でした. それからしばらくして、私は、「トイレに行きたい」そう主張して 部屋を出ました.もちろん彼女にはトイレで何をするのかわかった事 でしょう.しかし私にはなぜかそれを言わずにいる事は出来ませんでした. 相手が反応するまで、何度か「トイレに行きたい」と口にして、 それでも反応がないのを見るとあきらめてトイレに向かいました. そして個室に入って、さっきの事を思い浮かべながら、一人で 自慰にふけりました.苦しかったのは、……一番苦しかったのは、 やはり、あの奇妙な快楽から、自分が抜け出せなかった事でしょう. ……ちょっと腰を後ろにひくだけで逃れられたのに。そして同時に、 自分のしてしまった事への罪悪感が体にしみついてしまったように 思います. それから何年かが経ちました.あれ以来、自慰という自慰が、 女性の脚でペニスを悪戯される、そういうものになりました. 浪人をしてあれからもう一年ストレスに晒されつづけるのですが、 ポルノ漫画を最初に読んだのもこの頃でした.それ以来、 当分の間は、毎日のように本屋にいっては、ポルノ漫画を読み 続けたものです.当時読んだ最初のポルノ漫画、そして一冊だけ 見つけたポルノ小説は両方ともマゾヒスト的な妄想を形にしたもの でした.マゾヒスト関係の媒体がこれだけ少ないのですから、 不思議な事ですが……。(それ以来いくら立ち読みして探しても マゾヒスト関係のものを新たに見つける機会はめったに無かったのに) 奇妙な事ですが、忙しかったせいかあの事件の事は忘れてました. 何が思い出すきっかけだったのか、数年してまた思い出すのですが. 思い出してからというもの、彼女に会ってあの事件の事をいいたい、 そういう気持ちが日に日に増して来ました.もう一度踏みつけてほしい という浅ましい欲望と、そして同時にこの苦しい状況の理解者が ほしいという……事件の真相を聞き、自分の苦しかった心情を伝え、 そして、それを聞いた彼女がどう思うかを知りたい……そう思うように なりました。 そしてついにその機会が来ました.思い出してからはじめての 同窓会でした.この頃には既に大学に入ってましたが、大学では 周囲とあまり上手くいかず苦しんでました.同窓会の前日、 彼女に言うまいか言わないべきか、それでなやんで、まったく 眠れませんでした。どうしてだか、結局言わない事に決めたんですけど、 そのなかには彼女を気遣う気持ちもかなりあったように思います. 彼女には例の彼氏がいたし、いまさら蒸し返すのも悪い、そういう気持ちが ありました。しかし、その気持ちは裏切られる事になったのです. 同窓会の待ち合わせ場所である部室にいくと、彼女は部屋の端で 漫画を読んでました.私はその前に座って、他の人と喋ってました. そのうち後ろから、腰のあたりに異物感を感じました. 見ると、彼女が脚を伸ばし、私の腰の所にあててるではありあませんか。 そして、こう、つぶやきました。 「あなたを見てると、無償に踏みつけたくなるのよねぇ。ほれ、うりうり。」 かっとして、怒りが込み上げて、思いっきり怒鳴りつけました. もう何を行ったか覚えてませんが、怒りに身を任せ、早口に、捲くし立てて、 非難して、でも、周囲に人がいたのでどうして怒ってるのかの 確信にはふれられなくて……。 しばらくして、同窓会会場である酒場に移ろうという事になりました。 私はさっきの事が忘れられず、まだ悶々としてました。 さっき私がまくしたてた時の、彼女の不信そうな無表情の顔を 思い浮かべながら、話をせず、周りから少し外れて一人で歩いて いました。するとそこへ彼女が寄ってきました。 寄ってくると、何も言い出せず、しばらく無言のまま二人で歩いて いました。そのうち彼女が口を開いて、話が始まりました。 なんという事の無い世間話だったのですが、そのうち話は、 彼女が男性からもてる、ということに移りました。彼女がそう誘導 したのでしょう。 彼女は言いました。「私ね。クラスの男子にね、こう告白されたの。 (彼女が何て行ったかは忘れましたが、授業で習った数学の事と 引っ掛けたふざけた感じの告白でした。)だから、私、こう断ったの。 『悪いけど、私あなたと同類項でくくられたくないわ』って。」 私は数学が得意だったので、もしかしたら私へのあてつけだったのかも 知れません。私がその話を聞いて笑っていると、しばらく彼女は 黙っていました。そして、そのうち彼女は、こう、口を開きました。 『……**君さぁ、もしかして、悪戯電話の犯人じゃ無い?』 不意に真顔になって彼女の顔を見つめる自分。私の顔色をうかがおうと する彼女……。 読者の方々。ここで私はどんな態度をとったと思いますか? 答えは、答えは急に大声で思いっきり笑い出したのです。 あたりをはばからず、ははは、はははと腹を抱えて笑い転げたのです、 不信そうな顔をして「……ちょっと……まじめに答えてよ……」という 彼女。その反応を見てまた笑い転げる自分。何もかもが可笑しくて、 可笑しくて、まじめに考えていた事、悩んみつづけた自分、 相手の事を思いやろうとした事、性欲で気持ちよく舞い上がった自分、 そうさせた彼女、ちょっとでも自分は彼女から好かれてるんじゃないか、 そう思う事で転がり落ちそうになるじぶんを支えてた事、 そしてなにより、自分の苦しみを、ここまでこけにできる彼女、 そうしたことが、何もかも可笑しくて、楽しくて、顔を引きつらせて 息が出来なくてひーひーというまで笑って、回りを気にせず アスファルトに転がり、埃まみれになって笑った。 そんなのを見て、どういう態度をしていいか分からないという様子で、 またもまじめに答えるようにいう彼女。 いったい何をまじめに答えればいいんだい? なんとかかんとか、犯人は自分じゃないという自分。 すこしして飲み屋に着き、楽しい楽しい同窓会がはじまる。 わざと彼女の隣に座り、酒のつまみをとると見せかけて、彼女の胸を 肘で小突く自分。何度もそれを繰り返してると、彼女が座布団一枚分 横にずれてしまう. そのうち同窓会が終り、なぜか僕が会計をやることになる。数えて みると、お金が足りない.そういえば先に帰った奴から、彼女が お金を受け取ってたっけ. 「お金が〜足りな〜いんだけど〜、そ〜いえばT**君!さっき 受け取ったお金、君、がめて〜るんじゃないか!」 違うわよ!さっき渡したでしょ。すぐさま否定する彼女。ははははは、 ははははは、面白いよ、きみぃ〜。…… これが事件の全容です.tabaはこの同窓会があって、半年か一年くらい 経ってから書いたものです.まだ事件のことが忘れられなくて、最も 苦しかった時期でした。この屈辱的で、羞恥が沸き起こる事件の 事を当然人に言えるわけもありませんでした.生来の人間不信が この事件で顕著になってしまって、一時期は電車にのるだけで 不安が募ったものでした.周囲、特に女性が恐かったのです. 女性の笑い声を聞くと不安になって、自分が罵られているような 妄想にかられて、しかし同時に性欲が……もっと馬鹿にされたい、 苛められたい、性的な嫌がらせをされたい、そんな欲望と不安からくる 苦しさとで、胸が締め付けられて、窮屈な押し迫った、鋭い針で 刺されたような、そんな感じがしたものです. 全てに対してやる気を失ってしまって、大学に入った頃は燃えていた はずの希望は、まだ持ちつづけていたのですが、(私はある目標があって 大学に入ったのです。)それが単に辛いだけになってしまって、 まあもともとかなり狭い枠だったんですが、そこに入る為に 浪人時代の勉強以上にそれに集中して、のめりこんで、だから、 人とは会えないのですが、それ以前に、例の事件のせいで当然 会う気なんかさらさら起こらなくて、極端な孤独になり、自分から 望んで一人になったはずなのに、孤独で気が狂いそうになって、 でも人が一切信用できなくなってて、話しかけられても不安のせいで ただただその場を逃げたいとそればかり思って、スランプになり、 潰れそうになって、思うように手がつかず、焦りばかりつのって、 そうなってからと言うもの、大学の授業がないときは、 どこへともなく出かけて、時間が過ぎ去るのだけをあてにして、 常に他人と目的の為の努力とのプレッシャーに押しつぶされそうに なりながら、意味も無くふらつき、最後には例によって本屋によって ポルノ漫画の雑誌を立ち読みして、でもマゾヒストの悦ぶものなんて 年に一度か二度しか載らないから、たいていは不満のまま家に向かい、 帰りがけに駅のトイレによって、妄想を……女性にペニスを笑われながら、 暴行を加えられて、単なるストレス解消の道具とかして、それでも 勃起したり射精したりするのを軽蔑のまなざしで覗きこまれるのを 想像しながら、オナニーをしました。ほとんどの場合、最後は女性が、 私に精神的屈辱を与える為ペニスをぐりぐりと踏みつけてる、そんな ところを想像しながら射精するものでした. 例の事件と同時期に、知り合いの女性が新興宗教に入信してしまう という事件がありました.あと数年で世界が滅んでしまう事を教祖が 予言していた、そんな宗教でした。こちらは恋愛感情が無かったのが まだしも良かったのでしたが、それでも人間に対する不信感に 拍車をかけた事件でした.例の事件がその同じ月に起こったのは、 いまにしてみれば、象徴的な事でした. 同じ授業を受けてた女性に不審者と間違われて、影で「気持ちが悪い人」 呼ばわりされたっけ.その次の年には、ついに警察を呼ばれた事もあったし. まあ、普段からこちらが、わざと嫌われるように、電車で前に乗った女性の 脚をじろじろ眺めたり、そんな事はしてましたが、この二つの事件は こちらはそういうつもりだったわけではなかったので、大きくショックを 受けたものです. tabaを書こうと思ったのは、そんな完全なノイローゼ状態の、何一つ 救うものの無い状況の中でした。親しかった彼女の疑いのせいで、 全ての人が、自分を疑ってるような気がして、万が一他の「友人」に、 悪戯電話の犯人だと証拠も無いのに疑われたと、そんな事を言えば、 その「友人」も間違えなく、自分を疑う、そう思いこんでしまって いました.だから、絶対に事件の事を人に言えなくて、ましてその前の ペニスを踏まれるという屈辱は……言うまでも無いものでした. 最も自分を苦しめたのは、彼女の行動の二重性でした。不安から 逃れる為、自分がペニスを踏まれたのは、彼女が少なからず自分に行為を 抱いていたからだ、そう思いこもうと……完全な欺瞞ではあるんですが、 誰にも言えないなら、せめて事実を誤魔化して思いこむ事で、 事実から韜晦しようと、何度もしたものです.しかしそんな時は必ず すぐさま気付いてしまったのです、証拠無しに悪戯電話の犯人だと 疑われるほど信用された無かったんだと言う事に……。 tabaにつけた最初のタイトルが、「二重性」だったのもそのせいでした. 両極端なまでに矛盾して見える彼女の行為を、それゆえに両面から逃げ場を 奪ってしまったその行為を、そのままタイトルにしたわけです。 彼女の性的な、そして性格的な魅力の一つは、そのどこか性的な雰囲気と 体つきの中に、なぜかまだ幼さが残っているという、そこにあったのですが、 タイトルの「二重性」はこの性と幼さとの「二重性」でもあったわけです。 もっとも、このくらいの年頃の、女子高生達は多かれ少なかれこの魅力を 持ち合わせているのでしょうが……。 書き始めたきっかけは、この誰にも言え無い悩みを、せめて文章に する事で、多少なりとも自分の「治療」になるのでは無いかとそう思った からです。一時期心理学に凝った事があって、だから、自分を精神病の 患者なのだと自虐的に思って、これは「治療」なんだと、サイコドラマの 代わりなんだと思って書きとめたのです. 最初に書いた小説でした.それから、このサイトにのっている、yume10や dscaseなんかを本能剥き出しにして貪るように書きつづけたのです。 tabaは他のものと同じく未完のものですが、最初に前半の性格描写と ポルノ描写を、勃起しきって痛々しいまでになったペニスを撫でながら、 息をはぁはぁいわせて、誰もいない計算機室で、短い期間に書き終えて から、なんども書き足しています.最初は事実になるべく忠実に書こうと 思っていても、ポルノ描写の部分で、妄想をどこまでもはしらせて、 脚で潰れ、ひしゃげていくペニスを思い浮かべては、それが文章に 出来なくて、ほんの数行に何時間もかけてばかりでした.射精すると その日は書く気が無くなってしまったりとか、マソヒスティックな 心理を象徴させる言葉が出てこなくて、考えつづけて、それでも出なくて、 その心理を説明する為に、何行も何行も粘着的に書きつづけたり、 そんなところが多くて、かなり苦労して仕上げたものです. それから、書き足すたびに少しづつtabaに対する見方が変わってきました. 最初はポルノとしての色彩を強めて、あの事件に、自己の妄想を 結晶させた形でしたが、当時の心境により近いものを書きたくて、 ポルノ部分を中心に大きく改稿したものも書いた事があります. その改訂版はかなり時間が経ってから書いたもので、もう大分楽になって いたんですが、書いてるうちに当時の事を思い出してしまって、かなり 緊迫した精神状態でポルノ描写を書きました.書いてるうちに、 知らず知らずのうちに涙がでてきて、辛くて書けなくなったのですが、 その湧き上がった感情をどうしても書き留めたくて、目に涙を 浮かべながら書きました.まだ自分の中の奥底に、こんなにも歪んだ 部分が残っていたのかとかなり驚きでした. この二つのtabaは、冷静に、克明に事実を書きたいと思いつつも、 感情が噴出してしまって出来なかったものですが、それから、 色々な事が少しづつ解決して来て、やっとかなり楽になってから 書いたのが、上に書いた事件のあらましです.上に書いたのは、 ですから事実そのままで、そこに感情がのっかって、これから お読みいただくtabaがあるわけです。ですから、tabaと、上に 書いた事とで違いがあれば、上に書いた事の方が正しいと 思ってください.tabaも基本的には実話です.例えば、彼女が 家庭科で作った服を着せられる話がtabaに出てきますが、 あれは実話です.着る時に、「もしかして、**君、女装願望が あるんじゃない?」と言われた、それも事実です. ただ、その時の心理の方は必ずしも本当ではなく、その場の雰囲気の 強制はありましたが、絶対ではなく、別にショックも受けませんでした. そこにも書いた潜在的な女性的側面ゆえ、むしろ悦んで着ました. ですから、事実の上に、妄想と小説の運びとで歪められた心理が 乗っていると思っていただければ、一番正しいんだと思います. 事件が起こる少し前、ツルゲーネフの「初恋」を読んで大きな影響を 受けました.「初恋」の前半は、十六の少年が二十二の女性に 弄ばれる、そんな物語で、気の弱いところがある主人公は、 好きだというその心に付け入られて、魂の無いコケットの、完全な オモチャにされてしまうのです。その冷たさが、好かれているのを 承知で相手を突き放して弄ぶ事が悪意なしでただの遊びとしてできる その冷たさが、当時の私には心地良く感じられたのです. 最後には予想通り、結局振られてしまうのですが、その時の主人公の 強い挫折感が、全体的に敗北的な雰囲気をかもし出していて、 「敗北文学」とでもいうようなところがたまらなく好きで、 最後のところはそれこそ擦り切れるまで何度も読み返しました. (「いいえ、ジナイーダ・アレクサンドロウナ。あなたがどんなに 私をお苦しめなさっても、どんなに私を苛めなさっても、私はあなたを 一生愛します、崇拝します.」) そんな背徳的な物語ですが、全体はリリカルで美しく、その美しさが、 ヒロイン、ジナイーダと同じく、魔性のような魅力を持っています. (ちなみに、岩波版のほうが訳が素晴らしいです.) tabaも「初恋」の影響の元に書きあがったもので、(翻訳版の)文体を 真似ましたし、性格も、「初恋」の二人、ウラジミール・ペトロービッチと ジナイーダ・アレクサンドロウナに似せて書いていて、だから、主人公は 実際よりもずっと気弱ですし、「彼女」もずっと冷淡でコケティッシュ です。 あと、安部公房の「箱男」の影響もかなりうけました。
読む
ホーム
動画 アダルト動画 ライブチャット